キルヒホッフの法則は躓くところじゃない
電気勉強し始めた人、かつ、数学苦手な人にとってほとんどの人が最初に躓くポイントっていうのが、
“キルヒホッフの法則”
なんですよね。
長年、電験3種受験生のサポートをしてますがマジで多いです。
いや、正確には多かった、です。
僕がサポートする受験生には解決法を提示しているので、僕の周りでは少なくなりましたが、それでも駆け出しの頃はマジで多かったですよ。
で、このサイトをご覧になっている方でも、そういう方は多いと思います。
だって、普通の参考書で、普通に独学で勉強してたら、やっぱちょっと難しいですからね。
でも僕は同時に思うんです。
「キルヒホッフ可哀そう。。。」
と。(笑)
なんでかっていうと、実際話しを聞いてみると、
躓いてるのって「キルヒホッフの法則」ではなく、単に連立方程式が解けない、っていうだけの事がほとんどなんですよね。
法則の内容自体は理解している(というか理解できないはずがないレベル)が、その法則を使って数式を立てたり、立てた数式を解いていくっていう段階で躓いているだけなので、
ここでは、その辺も含めて解説していきます。
キルヒホッフの第一法則は超簡単
キルヒホッフの法則って、第一と第二法則がありますけど、
第一法則では、
“分岐点に流れ込む電流の総和と流れ出る電流の総和が等しい”
と言っているだけで、めっちゃ簡単ですよね?
電気回路の分岐点では、
流れ込む電流 = 流れ出る電流
必ずこうなりますよ、というだけのこと。
ある点に、Iという一本の電流が流れ込んで、
I1とI2という二本の電流が流れ出てくれば、
流れ込む電流 = 流れ出る電流
I=I1+I2
ということになる。
I1とI2とI3の三本が流れ込んで、I4とI5という二本が流れ出ていれば、
I1+I2+I3=I4+I4
になる。これだけ。
これ自体はすごく簡単。
キルヒホッフの第二法則も実は超簡単なんだ!
そして、第二法則で躓く人も割といますが、実はめっちゃ簡単というか、当たり前の事を言っているだけで、
“電気回路の任意の一回りの閉じた経路について、電位差の和は 0 である”
だいたい参考書等ではこういう言い回しで、文章だと堅苦しいですが、
下の図を見てください。
a点という場所があります。
ここの電位を、何ボルトでもいいんですが仮に「0V」だとしましょうか。
そこからb点へいくと起電力がプラスされた電位になり、
bからc点にいくと抵抗による電圧降下(I1×R1)で電位が下がり、
cからd点に行くときも電圧降下(I3×R3)で電位が下がり、
そしてa点に戻った時には、電位は元の「0V」に戻りますよ。
といっているだけ。
ある点から出発して回路をぐるっと一周したときに、出発点から一周してまた出発点に戻ってくるわけですが、
戻ってきたときに電位は変わりませんよ(電位差は0V)と言っているだけです。
回路を一周している間に、(起電力によって)電位が上がったり(電圧降下によって)電位が下がったりはするけれども、
出発点に戻ったときには、その部分の電位は変わりません。
という、
これも第一法則同様、当たり前のことを言っているにすぎません。
「いや、一周しても同じところを指してんだから同じ電位でしょ!」
ってこと。
だから、一周の回路に含まれる起電力と電圧降下、
上がった分の電位は、一周している間に必ず同じだけ下がる、ということで、
起電力の総和 = 電圧降下の総和
という方程式になります。
なのでこの回路のa→b→c→dという閉回路の場合だと、
起電力の総和 = 電圧降下の総和
E1 = I1R1 + I3R3
という式になる。
ちなみに、
起電力というのは電位が上がる前提、電圧降下というのは電位が下がる前提、
で上記のように数式にするので、
もし閉回路をたどる中で、電源がたどる方向に対して反対向き繋がっていて
「起電力を通るのに電位が下がっちゃうよ!」
っていう場合は、負符号をつけて-Eとなりますし、
(上記回路を、f→e→c→dってたどると、E2が逆を向いているので-E2と表す)
閉回路をたどる方向に対して電流が逆方向に流れてて
「抵抗を通るのに電圧が上がっちゃう」
という場合は、電圧降下を負符号で扱います。
(上記回路を、f→d→c→eとたどると、I3とI2の電流方向が反対なので、-I3R3、-I2R2と表す)
キルヒホッフの法則というのは上記の事を言ってるだけなので、そんなに難しいものじゃないですよね?
これだけなんですよ。
「キルヒホッフの法則」
というのは。
法則自体はすごく簡単、というか回路の“当たり前の事”を言っているだけの法則です。
で、そのキルヒホッフの法則に基づいて回路を「数式」にして、
電験3種の問題で出題されるパターンだとその数式にしたものを“連立方程式”で解くわけですが、
ここで躓く人が多い。
でもそれって、
キルヒホッフの法則が難しいんじゃなくて、
連立方程式が解けないだけなんだからね(/ω\)
なので、キルヒホッフの法則をいくら調べてもそれは解決しません。
解決するために必要なのは、
“連立方程式の解き方”
です。
連立方程式は中2くらいで習う内容なんじゃないかと思いますが普通に生活してたら連立方程式なんて解かないので、まあ忘れちゃいますよね(^^;
なので、簡単にここで、電験3種に必要なレベルだけを解説しておきます。
じゃあキルヒホッフの法則を使って回路を解いていきましょう。
では、このページで何度も登場しているこの回路。
この、
「I3に流れる電流[A]」
を、キルヒホッフの法則を使って解いてみいきましょう。
まずは、R1に流れる電流が右向きにI1、R2に流れる電流が左向きにI2、と定義されているので、
分岐点cに着目して第一法則を適用すると、
I1+I2=I3
という式がたてられます。
次に、閉回路を a→b→c→d→a というループで考えて、
それを 総起電力=総電圧降下 という形で数式にします。
E1=I1R1+I3R3
8=9I1+I3
さらに、右側にまだ数式化していない回路が残っているので、
f→d→c→e→f というループで同じように数式化すると、
E2=-I3R3-I2R2
4=-3I2-I3
(電流の方向を逆向きにたどるので電圧降下は負符号になる)
もちろん、ループをたどる方向は、f→e→c→d→f と上記とは反対の反時計回り方向でたどっても、
-E2=I2R2+I3R3
-4=3I2+I3
となりますが、式変換して両辺の符号を反転させれば、
4=-3I2-I3
と、全く同じ方程式になるので、たどる方向に決まりはありません。
はい、ここまで。
I1+I2=I3 ・・・@
8=9I1+I3 ・・・A
4=-I3-3I2 ・・・B
この3つで回路を全てたどって、回路全てを数式化できたことになるので
あとはこの連立方程式を解くわけですが、
ここで多分こんな疑問。
「未知数が3つもあって連立方程式が解けない!」
という躓き方をする人が多いですが、
未知数が3つあるなら、まずは2つに絞りましょう。
そのために上記の@式があるのですから。
いちおう加減法を解答例として示します。
A式のI1に、@式から変形できるI1=I3-I2を代入します。
8=9I1+I3
8=9(I3-I2)+I3
8=9I3-9I2+I3
8=10I3-9I2 ・・・A-2
はい、この時点でBとA-2式が
I2とI3だけの2つの未知数に絞れたので、これを連立方程式で解きます。
A-2式とB式を加減して未知数を一つ消せるようにするために、
B式を3倍する。
4=-I3-3I2 ・・・B
↓
12=-3I3-9I2 ・・・B-2
これで、A-2式からB-2式を引けばI2が消えます。
8=10I3-9I2 ・・・A-2
−)12=-3I3-9I2 ・・・B-2
------------------
-4=13I3
I3=-4/13≒-0.308[A]
ということでI3の電流値が求められました
計算結果としてマイナスの値になっていますので実際の電流の流れは、回路図で定義された電流の方向(下向き)とは逆向き(上向き)になるということですね。
つまり、I3は最初下向きに矢印を定義してましたが、実際の電流は上向きに0.308A流れるという結果になります。
2つ以上の電源がある回路をキルヒホッフの法則を適用して解こうとすると電流の未知数が3つ以上になることが多くて、そこで躓く人が多いんですが、
まずはそれを上記のような過程で2つに絞ってください。
すると、加減法を使ってどちらかの未知数を消すことができるので一つに絞れ、最終的に簡単な一次方程式の計算に持ち込めます。
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